マイコプラズマ肺炎・百日咳の検査について

2025年12月02日

利根中央病院
検査室
技師長
関根 美智子

イコプラズマ肺炎や百日咳は、細菌によって起こる感染症です。感染した人の咳のしぶき(飛沫)を吸い込んだり(飛沫感染)、感染者と接触したりすること(接触感染)により感染すると言われています。家庭のほか、学校などの施設内でも感染の伝播がみられます。
検査方法は、血液検査、検査キットを使用した迅速検査、LAMP法PCR法などの遺伝子検査、培養検査などがあります。

検査方法について

①血液検査
病原体に感染すると体の中には抗体というものができますが、その抗体が増えてきているかどうか採血をして調べます。しかし感染してすぐには抗体が作られないため、ある程度時間を置いて2回検査することもあります。また病院内で検査を行っていないため、検査当日には結果がわからないデメリットもあります。
炎症の程度を調べる炎症反応(CRP)や白血球などの検査はすぐに結果がわかります。
②迅速検査キット
咽頭ぬぐい液・鼻咽頭ぬぐい液を採取して、菌がいるかいないかを検査します。およそ15分程度で結果を知ることができます。菌の量が少ないと陰性になることがあるので注意が必要です。
③遺伝子検査
近年では最も感度(病気がある場合に、検査で陽性と診断される確率)・特異度(病気がない場合に、検査で陰性と診断される確率)が高いとされています。遺伝子検出は確定診断に有用です。
④培養検査
結果が出るまでに時間がかかり、また発育が難しい場合もあります。

当院での遺伝子検査について

当院では2017年に結核菌とマイコプラズマを対象としたPCR検査を導入しました。
その後、2020年に新型コロナウイルスのPCR検査を開始し、急速に高まった検査需要に応えるため、PCR装置を1台から3台に増設しました。新型コロナウイルス感染症が5類感染症になる前は、休日や夜間も検査を実施できる体制を整備して迅速な結果報告を行い、地域の感染拡大防止や治療方針の決定に大きく貢献しました。

2024年には百日咳のPCR検査を開始しました。
マイコプラズマと百日咳の検査は、1回の検体採取で同時に検査することが可能です。
検査時間は検査開始からおよそ40~50分程度です。現在は1日におよそ10件程度、多い時は20~30件ほど検査を実施しています。
マイコプラズマの検査では、感染の有無はもちろんですが、薬剤耐性も同時に検査が可能です。薬剤耐性とは、マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシンなどの推奨薬剤)が効きにくくなる性質で、治療薬の選択に影響する重要な指標です。この薬剤耐性菌の割合が多くなっているとの報告もあります。

検査結果はすぐに臨床側に報告し、適切な治療薬の選択に貢献しています。さらに感染対策チーム(ICT)や抗菌薬適正使用チーム(AST)と共有され、院内および地域の感染症対策に役立てられています。
当院での検査結果は2025年7月から9月の3か月間では、マイコプラズマPCR検査468件中59件が陽性(陽性率12.6%)であり、マクロライド耐性率は86.4%でした。また、百日咳菌PCR検査は426件中75件が陽性(陽性率17.6%)でした。
現在百日咳の薬剤耐性は判定できませんが、測定試薬が開発されて治療薬の選択に貢献できることを期待しています。

PCR検査では、感染リスクを伴う検体を扱うため、作業はすべて安全キャビネット(生物や環境にとってリスクとなりうる物質を安全に取り扱うために用いる装置)の中で行います。適切な防護服を着用し、安全を確保しながら正確な検査を実施しています。
検査室は、患者さんと直接お会いすることは少ないところですが、データ一つひとつが診断や治療、感染対策に欠かせない情報です。正確な情報を迅速に届けることで医療現場を支えています。「正確・迅速・安全」を合言葉に、地域の皆さまが安心して医療を受けられるよう、検査室全体で力を合わせて取り組んでいます。

おわりに

マイコプラズマ肺炎や百日咳などの感染症は感染してもすぐに症状が出ない潜伏期間があり、また症状が軽いこともあります。そのため家庭や学校で知らない間に感染を広げていることもあります。手洗い・うがいなどの予防対策はもちろんですが、咳やのどの痛みなどの症状が続いていたら医療機関への受診、検査をお勧めします。

  • (1) 安全キャビネットの中で検体処理を行う
  • (2) PCR 検査装置
  • (3) 検査試薬をセット
  • (4) 検査を開始

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