作業療法とリハビリテーション

2025年05月01日

利根中央病院
作業療法士
木暮拓美

「作業療法」は、「リハビリテーション」のひとつです。
「リハビリテーション(rehabilitation)の語源は、ラテン語でreは「再び」、habilisは「人間らしい」「できる」という語で、「再び人間らしく生きる」、「再びできるようにする」という意味になります。

現在、リハビリテーションには、作業療法、理学療法、言語訓練、聴能訓練、リハビリテーションスポーツ、リハビリテーション看護、心理療法など、さまざまの手段や方法があります。そして、係る職種には作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、看護師、管理栄養士、医師、薬剤師、医療ソーシャルワーカーと多岐にわたります。

リハビリテーションの歴史

世界的に「リハビリテーション」という言葉が使われるようになったのは、第一世界大戦・第二次世界大戦で負傷した兵士の回復のためのリハビリテーションで、その後、時代の変化と共に広がり、発展してきました。

作業療法の歴史

18世紀のヨーロッパで、精神病院に隔離されていた患者を解放し、農作業やレクリエーションをしたところ、心身の回復が得られたことが発祥とされています。医学の父と呼ばれるヒポクラテスは、病いや苦しむ患者の自然治癒力を高める方法として、園芸や木工などの「作業」を推進したことで、心と体の相互作用が重視されるようになったと言われています。

日本での「作業療法」の始まりは、18世紀~19世紀にかけて、ヨーロッパ各地で精神医学を学んで帰国した精神科医が、精神障害者の無拘束化を推進したことからとされています。

このような歴史と、戦中・戦後のリハビリテーションとが重なり、作業療法(Occpational Therapy)」の分野は広がっていきました。日本では昭和41年(1966年)に国家資格として制定されました。

そもそも作業療法ってなに?

だれでも、食べたり、入浴したり、日常生活に関わる全ての活動をしています。それらの活動を「作業」と呼んでいます。「作業」には、日常生活の活動(セルフケア)に加え、仕事や家事、余暇活動・遊び、地域活動など様々な活動が含まれます。これらの活動をするには心と体の働きが必要です。病気やけが、うまれながらの障害によって、心や体の働きが妨げられ、「作業」に不具合が生じた時、再び「作業」ができるように、心や体の機能回復を目指すのが作業療法です。

心や体の機能には、基本的動作能力(運動機能-関節の働き・筋力・感覚・知覚、心臓や肺の機能、精神機能、、認知機能-記憶力・理解力・判断力・意思疎通など)と、応用的動作能力(食事やトイレ、家事など、日常で必要となる活動)と、社会適応能力(地域活動への参加、就学、就労など)があります。それらの能力の維持・改善を図り、その人なりの、その人らしい生活を「作業」を通じて作っていきます。

作業療法の対象は?

病気やけが、うまれながらに障害がある人など、日常に支援を必要としているすべての人です。心でいうと統合失調症、気分(感情)障害など。体では脳卒中、脊髄損傷、高次脳機能障害、骨折など。年齢期の発達期でいうと、脳性麻痺、注意欠損・多動性障害、ダウン症候群など、高齢期では認知症、骨・関節障害など、とさまざまです。

例えば『脳梗塞を発症し、右の手足に不全麻痺が生じたAさん。「せめてトイレは自分でできるようになりたい」Aさんの希望に向けて、作業療法士(作業療法を提供する人)は、Aさんの基本的動作能力の回復のための練習に加えて、応用的動作能力の獲得に向け、実際にトイレで、車椅子から手すりに掴まり、立って、便座に移動し、ズボンの上げ下ろしの動作を繰り返し練習しました。
2カ月後、Aさんは手すりを使って、一人でトイレができるようになりました。この間、理学療法士さんとの練習で、歩行器で歩けるようになっていました。』

このように、病前と同等にはいかなくとも、工夫を加え、その人らしい思いで「作業」ができるように支援をしています。

作業療法士の活躍の場

医療や福祉、介護の現場はもちろん、保健・教育・就労支援など、あらゆる場所で、本人と社会の接点を作るため、作業療法士は活動しています。

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