HPVワクチンと子宮がん検診

2024年09月01日

利根中央病院
産婦人科医長
浦部夢子

「HPVワクチン」、または「子宮頸がんワクチン」と聞くと、どんなイメージをお持ちでしょうか?
もしかしたら副反応が怖いワクチンという印象の方もいらっしゃるかもしれません。ぜひ今回のコラムでHPVワクチンについて最新の知識を身につけ、将来のがん予防に繋げていきましょう。

子宮頸がんとは

子宮頸がんとは子宮の出口(=子宮頸部)にできるがんのことで、若い世代の女性の癌の中で多くを占めます。
日本では、毎年1.1万人の女性が罹患し、更に毎年約2,900人の女性が亡くなっています。患者は20代から増え始め、30代までにがんの治療により子宮を失ってしまう人が、年間に約1,000人います。
子宮頸がんの初期は無症状のため、不正出血などの症状が出た時には進行していることが多く、そのためワクチンによる予防と定期的に子宮がん検診を受けることで早期発見・早期治療を行うことが重要です。

 
 
 
 
 
 

HPVワクチンは子宮頸がんの予防にとても有効なワクチンです

子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(=以下、HPV)というウイルスの持続的な感染が原因で、いくつかの段階を経て、がんに至ることがわかっています。
HPVには200種類以上のタイプ(遺伝型)があり、子宮頸がんの原因となるタイプは少なくとも15種類以上ありますが、日本国内の子宮頸がんの患者から検出されるHPVのタイプは2種類が全体の6割を占め、残り5種類を含めた7種類が全体の8割を占めるという報告があります。
この最もがんになりやすい2種類、または7種類のHPVは、実は現在、ワクチンで感染を予防することができます。つまり、HPVワクチンの接種によりHPVの感染を防ぐことで、子宮頸がんの罹患を予防することが期待できるのです。
日本国内でも接種者は増加傾向で、接種が進んでいる海外では、子宮頸がんの予防効果がはっきりと出てきています。

HPVワクチンは、定期接種(=対象年齢なら無料(公費)で接種可能)のワクチンです。対象者は小学校6年生から高校1年生になる年度の女子です。
予防接種の問診票は、中学1年生(13歳)になる年度の女子の自宅に送付されます。問診票が見当たらないという方は、市役所で再交付が可能ですので、気軽にご相談ください。

これまで掲載した図の出典 厚生労働省「HPVワクチンに関するリーフレット」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/leaflet.html
これまで掲載した図の出典 厚生労働省「HPVワクチンに関するリーフレット」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/leaflet.html

HPVワクチンの安全性について

HPVワクチンが発売されてから今まで、国内外の研究でHPVワクチンの安全性について大規模な調査が行われてきました。
その結果、一時期報道されたようなワクチン接種後に生じたとされる多様な症状と、ワクチンとの間に明らかな因果関係はありませんでした。他の定期接種のワクチンにはないような、HPVワクチン特有の副反応というものはありませんので、安心して接種をご検討ください。他のワクチンも同様ですが、接種後に気になる症状があればまずは接種した病院にご相談ください。それでもお困りの場合は、当院の産婦人科にもご相談いただければと思います。

キャッチアップ接種について知ってください

HPVワクチンはとても有効なワクチンですが、安全性を十分に確認するために9年間ほど積極的におすすめをしていない時期がありました。そのため、その時期に接種の対象だった平成9年度から平成17年度生まれの女性は、自分が接種の対象だと知らずに接種の機会を逃してしまった方がたくさんいらっしゃいました。
現在は安全性に問題がないことがわかっていますので、接種の機会を逃した方が無料(公費)で接種ができるキャンペーン(=キャッチアップ接種事業)を全国で行なっています。(平成18・19年度の女子も、キャッチアップ接種の行われる期間中は無料で接種が可能です)

キャッチアップ接種は令和4年から3年間の期限付きで行なっており、来年3月で終了となります。なお、接種を完了するには半年間かかるため、今年17歳から27歳になる女性でまだ接種していない方は、今年9月末までに接種開始をご検討ください。

さらに詳しい情報は、下記のホームページからご参照ください。

がん検診も重要です

HPVワクチンは全てのタイプを予防することはできないため、がん検診により早期発見することも重要です。WHO(世界保健機構)では、『15歳のワクチン接種率が90%、35歳・45歳のがん検診受診率が70%、子宮頸がん治療を受けられる割合が90%』を達成できると、子宮頸がんを排除することができるとしています。幸い日本では、がん治療の目標は達成できており、全ての女性が子宮頸がんで苦むことがないよう、HPVワクチンによるHPVの感染予防と、子宮頸がん検診による癌の早期発見について、産婦人科一同、今後もしっかりと情報提供をしてまいります。

さらに聞いてみたいことがあれば、ぜひお気軽に産婦人科へご相談ください。

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