失語症・吃音について

2024年05月01日

利根中央病院
言語聴覚士
宮田 未来

たちの生活の中で当たり前に存在している「言葉」。自分の思いを相手に伝えたり、相手の言っていることを理解したり、コミュニケーションする上でどんなときにも欠かせないのが「言葉」です。

この「言葉」が思うように使えなくなる、そんな障害があるのをご存知ですか?この記事では言葉の障害「失語症・吃音」についてお話しさせていただきます。見た目では分かりにくい障害への理解、接し方など少しでも多くの方に知っていただければと思います。

失語症とは

脳梗塞や脳出血などで脳が損傷し、これまでに獲得した「聞く」「話す」「読む」「書く」の言葉の機能に問題が生じた状態を言います。

失語症の種類と症状

言葉に関わる重要な部分は、主に(右利きの方95%、左利きの方70%が)脳の左側(左脳)にあると言われています。また、左脳の中でも部位によって言葉の機能が分かれており、障害が起きた場所で失語症の症状も変わってきます。

運動性失語

左脳の中でも特に前方に存在し、言葉を表出す(声で言葉を話す)働きを行う部分を運動性言語野(ブローカ野)と言い、ここが損傷されると運動性失語(ブローカ失語)が生じます。

具体的な症状として、相手の話していることが理解でき、文章も読んで理解することができますが、自分の考えている言葉がすぐに出てこない(言えない)、言いたい言葉と全く違う言葉が出てくる、文字を読むこと・書くことができないといった症状が特徴です。

感覚性失語

左脳の中でも特に後方に存在し、言葉を理解する働きを行う部分を感覚性言語野(ウェルニッケ野)と言い、ここが損傷されると感覚性失語(ウェルニッケ失語)が生じます。

具体的な症状として、言葉はスムーズに出てくるものの、相手の言っている言葉を理解することが難しい状態です。イメージとしては外国語で何かを言われているような感覚です。文章も、文字が書いてあることはわかりますが、何を書いているのか意味が分からなくなります。また、話している本人も理解することができないため、つじつまの合わない会話をしてしまうことが多いのも特徴です。

ブローカ野とウェルニッケ野
阿部和穂「失語症研究がきっかけに…大脳の「機能局在論」とは何か」(All Aboutホームページ)より引用
https://allabout.co.jp/gm/gc/491788/
ブローカ野とウェルニッケ野
阿部和穂「失語症研究がきっかけに…大脳の「機能局在論」とは何か」(All Aboutホームページ)より引用
https://allabout.co.jp/gm/gc/491788/
運動性失語と感覚性失語
岡田忍「言語障害に関するQ&A」(看護roo!ホームページ)より引用
https://www.kango-roo.com/learning/3518/
運動性失語と感覚性失語
岡田忍「言語障害に関するQ&A」(看護roo!ホームページ)より引用
https://www.kango-roo.com/learning/3518/

混合性失語・全失語

左脳の前方後方がともに損傷されることで混合性失語が生じ、さらに重くなると全失語を生じます。

具体的な症状として、言葉を話す・理解することや文字を書く・読むといった全ての能力が障害されている状態です。

失語症の方と話すときのポイント

「焦らず」「大人として接する」「言葉以外も交える」ことが大切です。

言葉が出てこない場合に先回りして言いたくなってしまいますが、本人の意思を無視してしまうこともあります。言葉がどうしても出にくい場合には、「はい」「いいえ」で答えられるような質問にするなど工夫が必要です。

失語症は、認知症と異なり、物事の判断力自体は低下していません。簡単な言葉を使おうとするあまり、子供相手のような会話をするのは望ましくありません。

また言葉だけがコミュニケーションを取る方法ではありません。身振り手振りやジェスチャーなど混ぜることや、実物や写真などを組み合わせることで理解を促しやすくなります。

吃音とは

言語障害の中でもう一つ、吃音というものがあります。吃音は2~5歳頃に発症することが多く、5~8%の割合で見られます。そのほとんどが言葉の発達に伴い自然に消失しますが、8歳を過ぎると症状が消失しにくくなり、大人になるまで続く場合もあります。

症状

語頭音を繰り返したり(「わわわわたし……」)、引き延ばしたり(「わ―――たし」)、つまったり(「……わたし」)などし、滑らかに発語することが難しいのが特徴です。

原因

吃音になる原因は、はっきりとわかっていない部分もありますが、体質的なところが大きいと言われています。環境の変化や両親のしつけが原因ではないか?と思われる方も多いかもしれませんが、全く違います。吃音がではじめたきっかけと原因は関係ありません。

周囲の人ができること

吃音がある人に対し、「ゆっくりでいいんだよ」「落ち着いて話していいんだよ」など良かれと思い言ってしまいそうですが、実はよくない場合が多いです。吃音がある人は、滑らかに発語することが難しいだけで、焦っているわけではないことを知っていただけたらと思います。そのため、まずは相手の話を「ゆっくり聞く」ことを心がけることがポイントです。人によっては助け舟を出してほしい人などもいるため、「あなたはどうしてほしい?」と本人の考え方を聞き対応することも大切なポイントです。

吃音かと思ったら…
「「吃音が心配な小4の孫、どうすれば…」の悩み 当事者と親、専門家のアドバイスを紹介します」(東京すくすくホームページ)より引用
https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/life/59506/
吃音かと思ったら…
「「吃音が心配な小4の孫、どうすれば…」の悩み 当事者と親、専門家のアドバイスを紹介します」(東京すくすくホームページ)より引用
https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/life/59506/

PAGE TOP