2022年09月01日
とね訪問看護ステーション
訪問看護認定看護師
鳥海清美
自分自身も含めて、大切な家族が病気やケガ、認知症により、もし介護が必要な状態になったら……と考え、日々の生活はしていないと思います。
年齢を重ねていき何となく介護について考えるも、まだ大丈夫だと考えるのは普通なことだと思います。しかし、介護は突然やってきます。
母の介護の経験から
私の母が入院し、検査の結果、医師から余命わずかと告知され、実際に看取りとなるまで、わずか4か月、あっという間でした。母は「できるだけ家で、最期は病院で」と選び、介護保険申請、ケアマネージャー選び、在宅サービスを整えました。私自身は認定看護師になるために通学中であり、いつも気持ちは焦って、パニック寸前でした。また、こうすれば良かったという後悔もあります。そうならないために、介護について家族で一緒に考えて貰えるきっかけになれば幸いです。
介護が始まるきっかけ
病気やケガによる入院、または認知症の症状の進行などが原因で、介護が始まる場合が多いです。
まずは相談、介護保険申請
市役所の窓口か地域包括支援センターに相談し、申請してから認定調査後に判定されます。要支援、要介護に認定が出るので、その後居宅介護事業所を決め、ケアマネージャーとケアプランを作成し介護サービスを利用するのが一般的です。
介護の場所はどこ? 在宅か、介護施設か?
施設には介護保険利用して入居できる公的介護施設と民間介護施設があります。
公的介護施設は、介護施設特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設、介護医療院の4種類で、介護度により入所できない施設もあります。初期費用もなく平均で月に9~16万円です。
民間の介護施設は介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームがあり、グループホームは入所するのに認知症など条件があります。初期費用も必要で、月にかかる金額も平均15~35万円のようです。
これからの社会的背景を考えると、民間介護施設、公的介護施設共に増えないと考えられます。そのため在宅介護しつつショートステイなど組み合わせる「在宅時々(お泊り)介護施設」という介護が増えると思います。
主介護者を決める
主介護者はあくまでも家族のまとめ役で、ケアマネージャーや介護サービス利用者との間で対応ができる家族の方です。その方がすべての介護を担うということではないです。
大切なのは介護される側の気持ち
介護が必要な状態になっても、一人ひとりを尊重して最後まで自分らしく生活できることが大切です。介護する側もされる側も初心者です。それゆえに介護する側の気持ちが大きくなりすぎ、介護される側の気持ちを考えず一方的に決めたりすることも多くありますが、それはダメです。
家族会議のすすめ
介護状態になる前に話ができるのが一番ですが、なかなかできなのが現実です。
夫婦間や家族間でも、知っているつもりでも意外と知らないことが多くあります。親や配偶者が介護状態になったら?を考え、思いを聞き、希望する暮らし方、生きかた、お金など一緒に考えて家族で共有していくことが大切です。コロナ禍でなかなか家族皆と会うことが少ないですが、そういう時期だからこそ、家族が揃った時に家族会議してみてはどうでしょうか?
介護離職はしない
介護離職を良く耳にしますが、介護離職せずに介護休暇や介護サービスを上手く使っていくことが大切です。介護離職してしまうと、使える介護サービスが制限されてしまう可能性があります。介護が終わった後の自分自身の生活や生き方を考える事も大切です。
家族の形もさまざま
高齢夫婦のみ、未婚の子供世帯など小さな世帯が多く、介護の責任が一人の家族にのしかかる状況もあります。そのため大切な事は介護を頑張り過ぎない、一人で抱え込まない、周りを巻き込むこと、介護サービスを上手く使うことです。独居世帯は地域包括支援センターなど相談できる窓口を作ること、緊急通報サービスなど見守りサービスの活用することです。またお茶のみ友達など積極的に人と関わる機会を作ることも大切です。
介護の時間の流れ
在宅で介護されている方の介護の時間や経過の目安ですが、これを考えると次に起こることの予測にもなると思います。(下表参照)
①「混乱期」
突然始まる介護に戸惑う時期。両親(要介護者)の変化を受け入れられず、否定の感情が起こります。介護について家族間で話し合い、気持ちのズレも解消しておくと良いです。
②「負担期」
両親(要介護者)のできないことが増え、本人も混乱してイライラし、家族も介護生活に先の見えない不安が大きくなる時期です。介護する側、介護される側共に疲労してきます。手すりやベッドなど必要な福祉用具を揃えていき、ショートステイ、デイサービスの使用などをケアマネージャーと相談し、介護サービスを変更してもらうことが必要だと思います。
③「安定期」
介護度は高くなっており、介護に費やす時間が増え、介助も多く必要になる時期。自宅での介護が難しくなっている状況ならば施設など考える時期です。また介護する側、介護受ける側もお互い気持ちが落ち着き、様々な介護サービスを受け入れ、介護を人に任せることができる時期でもあります。この時期になると介護する側もショートステイなど上手く使うことができて、自分の時間が増えてきます。訪問看護で関わっていて、この時期が長いと介護が出来て嬉しいなど幸福感を得られる方が多いように感じます。この時期に看取り期に向けてどういう最期を送りたいか?最期はどうしたいか?病院か家か?など本人含め家族と確認しておくと良いと思います。
④「看取り期」
介護にはゴールがあり、考えたくないですが、それは死別です。この時期は介護する側は現状を受け入れられず、否定や絶望感が起こる時期ですが、少しでも家族との時間を大切にする時期です。実際は後悔のない介護は難しいかもしれません。気持ちの整理に時間が必要な場合もあります。大切なのは介護していた時の自分を否定しないことです。本当に頑張ったと思ってください。
介護状態にならない努力も大切
健康な生活を長く続け、介護を受ける状態にならないようにすることで、健康寿命を延ばすことになります。自分の健康づくりは自己責任という気持ちが大切です。