2022年08月01日
利根中央病院
皮膚科医師
永井弥生
「爪が食い込んで痛い」 足の親指に多い悩みです。治療方法はいろいろあり、爪の形や日常生活の状況にあわせて選択しています。
「陥入爪(かんにゅうそう)」と「巻き爪」
爪が喰い込んで痛い、という点は同じですが、正確には、爪の形が変形しているかどうかで呼び方が違います。
「陥入爪」は爪自体の変形は少ないものの爪の側縁だけ少し曲がっていたり、深爪してしいまってその先端が皮膚に喰い込んでしまって皮膚の赤み、腫れとともに痛みを生じます。爪のワキにジクジクしたしこりのようなものができてしまうこともあります(図1)。これを「肉芽(にくげ)」といいますが、肉芽ができると、さらに爪を圧迫するので痛みが強くなってしまいます。
「巻き爪」は爪自体が丸く弯曲し、変形しているものです年齢とともに進むことはありますが、ひどくなると弯曲した爪が皮膚に喰い込んで痛みを生じます。(図2)
治療は症状に合わせて
治療はいろいろあり、爪の状態に合わせて選択したり、組み合わせたりします。痛みをとって日常生活の苦痛をなくすことが目標です。
(1) 抗生物質など
陥入爪で爪が喰い込んで皮膚が赤く腫れている場合に一時的に使います。肉芽に対しては冷凍凝固療法(液体窒素)を行うこともあります。
(2) テーピング
簡単にできる方法で、爪のワキの皮膚を引っ張って固定し、爪への圧迫を和らげます(図3)。日常できる範囲で行っていただいています。深爪で喰い込んでしまっているときには、爪をのばしたいのですが、痛みでのばせないことがあります。テーピングをしながら爪の先を皮膚より先までのばせると、改善する場合もあります。
(3) ワイヤー法(自費診療)
形状記憶のワイヤーを爪に装着し、弯曲した爪を持ち上げることで痛みをとります。弯曲の強い巻き爪で、爪がある程度のびている方には行なえます(図4)。ただし、爪の先の方しか開けないので痛みが再燃しやすい、装着しているワイヤーが気になるなどの問題があります。
(4) 装具による爪矯正(自費診療)
弯曲した爪の両端にプラスチック装具をつけ、少しずつ引っ張って曲がった爪をのばしていきます。月に1回の交換で5~6回が目安です(図5)。ワイヤー法では先端部分しか爪が開かないので、根本から弯曲を治すためにはこちらの方法になります。一度装着すると爪が持ち上げられるので、痛みの軽減には有効です。
爪自体の曲がりが少ない陥入爪でも、爪を持ち上げるように装着することで痛みを軽くすることができます(図6)。
(5) フェノール法
局所麻酔をして、喰い込んでいる爪を部分的に抜きます。爪を作る細胞にフェノールを作用させることで、その部分の爪が生えなくなります(図7)。他の治療で効果が不十分な場合に行うことがあります。
予防と日常の注意
若い方に多い「陥入爪」は深爪や靴による圧迫が原因となることがあります。「巻き爪」は、加齢による場合や爪白癬の合併による場合もあります。爪はワキを切りすぎないように切って、深爪をしないように日常から注意することが大事です(図8)。
「爪白癬」は爪の色が白色〜黄色、黒色となって厚く、もろくなります。ひどくなると治すのが難しいことも多いので、早めに治療しましょう。
足の指をしっかり使った歩き方をしないと、重力がかからないため、爪の弯曲が進みやすくなります。インソールの使用もおすすめしています。
爪の状態は年齢とともに変化します。治療しても再発することがあります。日常の予防も大事です。お困りのことがあればご相談ください。