2021年08月01日
利根中央病院
認知症看護認定看護師
石原千恵子
認知症はある日突然発症する病気ではなく、前触れとして、小さな異常サインを必ず出しています。
年のせいだからと決めつけるのではなく、家族や身近な方が早めにサインに気づき病院に受診することが大切になってきます。
認知症とは
認知症は、記憶や判断力が障害される事で、今まで出来ていた事ができなくなり生活に支障がでてくる状態です。
高齢化により、認知症の人数も増加しています。厚生労働省によると、65歳以上の高齢者では平成24年度の時点で、7人に1人程度とされていました。認知症の前段階と考えられている軽度認知障害(MCI)の人も加えると4人に1人の割合となります。また、2025年には認知症の有病者数は約700万人を超えると言われています。軽度認知障害の方がすべて認知症になるわけではありません。また、年齢を重ねる事で発症する可能性が高まり、今後も認知症の人は増え続けると予想されています。(図1)
政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら知っておきたい認知症のキホン」より
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201308/1.html
認知症と加齢によるもの忘れの違いは、認知症は体験自体を忘れており、忘れている事の自覚自体がありません。加齢による物忘れは、体験の一部を忘れており、忘れている事の自覚があります。(表1)
政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら知っておきたい認知症のキホン」より
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201308/1.html
代表的な疾患の特徴
アルツハイマー型認知症
最も多い疾患です。記憶障害(もの忘れ)から始まる場合が多く、他の主な症状としては、段取りが立てられない、気候に合った服が選べない、薬の管理ができないなどです。
脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血、脳動脈硬化などによって、一部の神経細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、神経細胞が死んだり神経のネットワークが壊れたりします。記憶障害や言語障害などが現れやすく、アルツハイマー型認知症と比べて早いうちから歩行障害も出やすくなります。
レビー小体型認知症
幻視や筋肉のこわばり(パーキンソン症状)などを伴います。
若年性認知症とは
認知症は高齢者に多い病気ですが、働き盛りの年代でも発症する場合があります。65歳未満で発症した場合を「若年性認知症」といいます。厚生労働省によると、若年性認知症の有病者数は約3万8千人おり、そのうち50歳以上が8割超を占めるとされています。
「新しいことを覚えられない」「もの忘れが多くなった」「仕事や家事の段取りが悪くなった」などの変化が現れ、その症状が続くようであれば若年性認知症のサインである可能性があります。早めに受診を行ってください。
(厚生労働省ホームページ認知症参照)
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_recog.html
予防について
アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症は、生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症など)との関連があるとされています。生活習慣病の予防や治療は、認知症の予防にも繋がってきます。
野菜・果物・魚介類の豊富な食事を心掛け、定期的な運動習慣を身に付けたりと、普段からの生活管理が認知症の予防につながることが分かってきています。
また、運動ができなくても、楽器の演奏や手芸、折り紙、塗り絵、間違い探し、計算問題、パズル、料理などの手作業を行い体の一部を使う事で、脳を活性化できる生活習慣も良いと言われています。
人との関わりや会話は脳を活性化すると期待されています。
症状が軽い段階のうちに認知症であることに気づき、適切な治療が受けられれば、薬で認知症の進行を遅らせたり、場合によっては症状を改善したりすることもできます。日頃の生活管理と早期診断や治療が大切になります。
認知症看護外来
毎月第1と第3火曜日の午後に認知症看護外来を行っています。看護外来では、認知機能の検査や日常生活でのアドバイスなどを中心に行っています。
認知症看護外来受診の方法は、利根中央病院をかかりつけの方が対象になります。かかりつけの主治医に、認知機能の検査をしたい旨を伝えてもらい、認知症看護外来の予約をとってください。認知症看護外来の当日は、普段一緒に生活をされる家族の方と一緒に受診してください。普段の生活の様子をご本人だけでなく、ご家族からもお話をききます。ご家族の方が同席できない場合はご本人だけ受診でも大丈夫です。看護外来は、病名の診断や医師の診察はなく、認知症看護認定看護師が、日常生活の中での改善方法を患者さんと一緒に考えていく場になります。