おとなのワクチン

2020年09月01日

利根中央病院
総合診療科医師
渡邉 健太

今回は予防接種(ワクチン)を受けることで、発症率を下げることができる病気についていくつか紹介します。新型コロナウイルス感染症対策として様々な工夫をされているかと思いますが、現在のところこの病気に対する一般に使用可能なワクチンはありません。そんな今だからこそ、ワクチンで防ぎえる病気について知っておくことは大切だと考えます。

ワクチンについて

ワクチンには定期接種と任意接種があります。定期接種は法律に基づいて市区町村が主体となって実施します。費用は一部または全部が公費負担です。任意接種は希望者が受けるもので、費用は基本的には自己負担です。

帯状疱疹【任意接種】

帯状疱疹は顔や体に痛みのある赤い斑点や水ぶくれができる皮膚の病気です。皮膚の症状が治まった後も長期間にわたって痛みが続くこと(帯状疱疹後神経痛)があります。水ぼうそう(水痘)を起こすウイルスが原因となります。このウイルスは水痘をおこした後、脊髄という神経に潜伏しています。加齢やストレスなどで抵抗力(免疫)が下がると再びこのウイルスが活動を再開して帯状疱疹をおこします。50歳以上で発症しやすく、加齢とともに発症率が上がります。一生のうちで3人に1人が経験するといわれています。
水痘ワクチンは、水痘の発症および重症化予防として1〜3歳の小児で定期接種となっていますが、50歳以上の方は帯状疱疹予防として任意接種することができます。水痘ワクチンには帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛の発症を予防する効果があります。
また、最近では帯状疱疹ワクチンが発売され、水痘ワクチンよりも予防効果が高いことがわかっています。

風疹【定期または任意接種】

風疹は風疹ウイルスが原因で発熱や発疹、リンパ節の腫れなどをおこす病気です。感染しても症状がでないで終わることも多いのが特徴です。一方で妊婦が感染すると胎児が難聴や心疾患、精神発達遅滞を伴う「先天性風疹症候群」を発症することがあり注意が必要です。現在は麻疹風疹混合(MR)ワクチンとして2回(1歳と小学校就学前1年間)の定期接種となっています。2回接種により99%免疫を獲得できるとされています。
しかし、これまでの政策の影響で昭和37〜53年度生まれの男性は公的な接種の機会がありませんでした。昨今の風疹の流行をうけて2019年から風疹抗体検査およびワクチン接種が対象世代に行われるようになりました。対象の方にはお住まいの市町村からクーポン券が配布されています。まずは、お近くの医療機関で抗体検査を受けていただくようにお願いします。
なお、過去の制度の変遷から、昭和37年度から平成元年度に生まれた女性と、昭和54年度から平成元年度に生まれた男性はワクチン接種機会が1回です。妊娠を予定している方とそのパートナー、現在妊娠中の方のパートナー等を対象に、ワクチン接種の助成事業を多くの自治体で行っています。助成の対象者や費用はさまざまです。詳しくは各市町村の情報をご確認ください。

肺炎球菌性肺炎【定期接種】

肺炎球菌は高齢者の一般的な肺炎の原因で最も多い菌の一つとされます。肺炎の他にも中耳炎や副鼻腔炎、髄膜炎などの原因にもなります。肺炎では咳、痰、発熱、息苦しさ、食欲低下などがみられますが、高齢者ではこれらの症状がはっきりしない場合もあります。
肺炎球菌ワクチンには肺炎球菌感染症の重症化と肺炎球菌性肺炎の発症の予防効果があります。2023年度までは、これまで接種歴がなく、該当する年度に65歳・70歳・75歳・80歳・85歳・90歳・95歳・100歳になる方が定期接種の対象となります。沼田市・川場村・みなかみ町・片品村・高山村・昭和村は自己負担3000円で受けられます。
なお2ヶ月〜5歳の小児も定期接種対象ですが、ワクチンの種類と接種回数が異なります。

インフルエンザ【定期または任意接種】

インフルエンザウイルスが原因となり、かぜ症状に発熱、だるさ、関節痛などを伴う病気です。通常のかぜに比べて症状が強いのが特徴です。体の抵抗力が不十分な乳幼児や高齢者、基礎疾患のある方は特に重症化しやすいとされます。手洗いや咳エチケット、ワクチンによる予防が大切です。ワクチンは発症予防だけでなく、重症化の予防効果が高いことがわかっています。
65歳以上および60〜64歳で基礎疾患のある方は定期接種、それ以外の方は任意接種です。利根郡・沼田市で定期接種に該当する方は1200円の自己負担で接種できます。おおよそ12〜3月頃に流行するため、10〜11月頃の接種が勧められます。

まずは相談を

接種希望の方はまずかかりつけの先生や利根中央病院へご相談ください。
また、ワクチンや病気の詳しい説明については下記のサイトをご覧ください。

PAGE TOP