近視について ~スマホ携帯ゲームの長時間使用に注意~

2017年05月01日

利根中央病院 眼科医長
高橋 宙

この時期になると学校の健診で視力低下を指摘され、当科に受診されるお子さんが多くなります。その大多数の原因は「近視(近眼)」です。近視は裸眼では遠くの対象物がぼやけてしまうという症状をきたしますが、眼鏡やコンタクトレンズで矯正が可能ですので近視そのものは病気ではなく、生活に大きな支障を及ぼすことはありません。しかしながらお子さんの近視の進行を心配する声は少なくありません。

近視とは

目は小型カメラに似ており、細かな光学的なパーツで構成されています。前方にある角膜と水晶体はレンズにあたり、後方にある光を感じる神経の膜である網膜に焦点を合わせることで、ものが見える仕組みになっています。さらに水晶体の周りには小さな筋肉がついており、水晶体の厚みを変えることで焦点調節を行います。この働きを調節力といいます。
調節力を働かせない状態で、遠方から来た光(平行光線)が網膜にぴったり焦点を結ぶ目を正視眼といいます(図1)。

図1
図1

正視眼では調節力を使うことで、遠方から近方まで、はっきりものを見ることができます。一方、焦点が網膜の前方にずれた目を近視眼と呼びます(図2)。

図2
図2

焦点が網膜に合わなくなるため、像がぼけて見えることになります。はっきりものを見るためには、目の前に補正レンズを置く必要があります(図3)。

図3
図3

その代表が眼鏡やコンタクトレンズです。近年では、レーザー光線によって角膜の屈折力を変えるレーシックなどの屈折矯正手術も実施されています。

近視の原因

眼球の前後方向の長さ(眼軸長といいます)が長いほど網膜は後方に来ることになるので近視は強くなります。親が近視の場合は、眼球も似た形になるので子も近視になる傾向があります。近視の遺伝する確率は9割近いとの報告があります。また、近くのものを見続けようと、調節力を長時間働かせると眼軸が延長するということもわかっています。

近視が進行しすぎると

近視が進行すると裸眼での遠方視力は低下しますが矯正視力は通常下がることはありません。しかし極端に進行してしまうと、前述したように眼軸が伸びてしまうために網膜やそれを栄養する脈絡膜といった構造が薄くなってしまいます(風船が膨らむとゴムが薄くなるように)。その結果、脈絡膜新生血管、網脈絡膜萎縮、網膜分離症などの重大な病気を発症しやすくなります。裸眼では10㎝以内にしかピントが合わないような高度な近視のかたは注意が必要です。

近視の進行予防のために

遺伝による部分は対処のしようがありませんが、日ごろの目の使い方の改善によって進行を抑えられる可能性があります。近視の人は普段、遠方にピントが合うような度の眼鏡やコンタクトを使用していると思いますが、近くを見るときは焦点が網膜の後方に来ることになるので、調節力を働かせて網膜に焦点を合わせていることになります(ちなみにこの調節力が低下した状態を老眼と呼んでいます)。老眼になる前の若いうちは、遠くを見るための眼鏡をしたままでもかなり近くのものにもピントが合わせることができますが、スマートフォンや携帯ゲームを長時間使用などしていると、それだけ調節力を働かせ続けていることになり近視進行の原因となります。近くを見るときに眼鏡やコンタクトを外せば、調節せずに済むので問題ありません。しかし現実にはそんな面倒なことはなかなか実践できません。時間を制限する、なるべく離して見るということが重要です。

図1~3 
日本眼科学会 http://www.nichigan.or.jp/public/disease.jsp より

PAGE TOP