2014年11月01日
利根中央病院
泌尿器科医長
冨田健介
男性の皆さん、トイレが近いのは歳のせいだと思っていませんか。様々な排尿の症状をもたらす病気の一つに前立腺肥大症があります。適切な対処により、現在のお困りの症状を改善したり、将来の苦労を減らせる場合がありますので、気になる症状のある方はぜひ泌尿器科でご相談下さい。
Q.前立腺とは?
前立腺は膀胱の真下にある、男性にしかない臓器です。栗やクルミほどの大きさで、尿道の一部は前立腺の中を通っています。精液の一部を作るはたらきがあります。
Q.前立腺肥大症とは?
通常は栗ほどの大きさの前立腺が、年齢を重ねるごとに大きくなり、尿道を押しつぶして尿の出が悪くなるなどする病気です。50歳代くらいから患者さんが増え始めます。代表的な症状は、トイレが近い、尿の出が悪い、残尿感がある、夜間に何度もトイレに起きる、トイレの我慢がきかない、などです。これらの症状は肥大症以外の原因で生じることもあります。
Q.前立腺肥大症をほおっておくとどうなりますか?治療をしなくてはダメですか?
重症度に応じた治療開始が望ましいです。例えば残尿(排尿のときに出し切れず、膀胱に残ってしまう尿)が多い人の場合、尿閉(尿をまったく出せない状態)になりやすく、重症化すると命の危険もある尿路感染症、腎機能低下の原因になるため治療が必要です。また、長いあいだ尿の出にくさが続いたことにより、膀胱の縮む力が弱ってしまう患者さんもいます。その場合、これから述べる治療でも改善しにくくなることもあります。
Q.どんな薬を使うのですか?
いくつかの薬剤がありますが、特に次の2種類の治療薬を使う事が多いです。
- ①α1遮断薬(ハルナール、フリバス、ユリーフなど)
- 最もたくさん使われています。前立腺に囲まれた尿道の緊張を抑えることで、楽に尿が出せるようになります。特有の副作用として、人によっては、立ちくらみやふらつきが出やすくなる場合などがあります。
- ②5α還元酵素阻害薬(アボルブ)
- 難しい名前ですね。前立腺を小さくする作用があり、①に併せて使うことが多い薬です。ゆっくり効果が現れるため長期間の服用が必要ですが、大きな副作用が現れることは稀です。
Q.手術ではどのような事をしますか?
手術にもいくつかあり、代表的なものを説明します。
- ①TUR-P(経尿道的前立腺切除術)
- 当院では月に数人の患者さんに行っています。内視鏡(細長いカメラ)を尿道の中に進め、尿道を押し潰している前立腺をチップ状に細かく削りとることで、尿道を広げます。下半身の麻酔をかけて1時間から1時間半程度の手術です。1週間くらい入院して頂くことが多いです。稀ですが出血が多くなる可能性、手術後にも十分に尿の出が良くならない可能性があることなどです。全般的には、手術を受けてよかったという感想を頂けることが多いです。
- ②HoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術)
- こちらは先に前立腺を大きな塊のままくり抜いて、それから専用の器具で細かく刻みながら吸い出します。肥大症の中でも特にサイズが大きい患者さんの場合には、①と比べて短時間で手術を終えられるなどのメリットがあります。
Q.前立腺肥大症から癌になりますか?
前立腺肥大症と癌は別の病気です。しかし、共に50歳代から増え始め、同時に見つかるケースもあることから、PSA検査(血液検査)を受けて頂くことがお勧めです。
Q.前立腺肥大症で通院中ですが、どのような事に気を付ければ良いですか?
かぜ薬や一部の薬剤の中には、膀胱の機能を一時的に低下させるものがあります。肥大症のある方の場合には、特にこれらの薬を飲んだ後に尿が出にくくなったり、力を入れてもチョロチョロとしか出なくなったりする場合があるので、注意が必要です。
Q.お酒を飲んだ後に尿が出なくてお腹がパンパンになって、病院に運ばれたことがあります。
肥大症のある方の場合には、お酒(アルコール全般)も尿の出を悪くする場合があります。特に法事や同窓会など、普段より酒量が増える機会などは要注意です。