NST委員長の言葉・メンバー構成

利根中央病院栄養療法チーム

利根中央病院栄養療法チーム チェアマン/脳神経外科医長 河内 英行

NST(Nutrition Support Team:栄養サポート・チーム)は1970年に米国で始まった、患者さんに適切な栄養管理を行うチームのことです。数年前に日本にも導入され、最近クローズアップされています。
当院では平成16年4月より本格的な活動を開始し、現在、NST教育認定施設となっております。メンバーは医師、歯科医師、看護師、薬剤師、栄養士、調理師、言語聴覚士、検査技師、MSW、事務職員など約40名のスタッフで構成され、多職種が参加した医療チームとして栄養不良患者さんの栄養改善に努めております。
日本においては入院患者の約30~50%が栄養不良と言われております。実際、当院でも入院患者さんの約30%が3.0g/dl以下の低アルブミン血症の状態にあります。昔から「病気が良くなれば、また食べることができるようになるよ。」という言葉を耳にしますが、はたして本当にこれで良いのでしょうか。病気だからこそ健康人よりも十分な栄養が必要なのではないでしょうか。実際に栄養不良の患者さんは合併症の発症率が約2~20倍増加すると報告されております。具体的には栄養不良により(1)免疫力低下による易感染性、(2)創傷の治癒遅延、(3)腸管壁透過性の亢進により腸内細菌が血液中に進入して敗血症を発症、(4)骨格筋の減少による廃用萎縮・寝たきり、(5)呼吸筋の減少による喀痰排出困難・肺炎などを生じます。これらにより更なる合併症の発生・入院の長期化に至ります。このことからも患者さんにとって栄養療法は患者ケアの中心となるべき治療と考えられます。患者さんに適切な栄養や栄養法をみんなで考え、提供することがNSTの仕事です。
主な活動のひとつにNST回診があります。入院時に主観的包括的評価といったスクリーニング法をもとにNST介入が必要な患者を選択します。その後、週1回のNST回診にて患者さんの栄養評価(アセスメント)を行い、患者さんの病態や今後の経過を考慮し、静脈栄養が良いのか、あるいは経腸栄養が良いのかと栄養法について検討します。原則的に腸が使える患者さんには経腸栄養を推奨しています。また長期経腸栄養患者には内視鏡的胃瘻造設術(PEG)や内視鏡的腸瘻造設術(PEJ)の導入も行っております。次に必要なエネルギー量、栄養の配分(たんぱく質、脂肪、炭水化物、水分量)を決定し、患者さんに供与します。そして1週間ごとに再評価を退院まで繰り返し行っていきます。その結果、退院時の患者さんの体力が維持されていることにより再入院が少なくなり、また紹介された開業医の先生方に安全にお返しすることができます その他の活動として、さまざまな疾患に対する経腸栄養剤や輸液、また経腸栄養ポンプや点滴ルートなど機材の選択や管理があります。また職員に対する啓蒙活動も重要な仕事のひとつです。
当院NSTでは病院スタッフ全員が患者さんの栄養を考えていけることを目標にしています。そのために平成16年4月から定期的な学習会や各病棟への「NSTニュース」の配布などにより適切な栄養療法の啓蒙活動を行っております。この定期学習会は毎月第2金曜日18時から講堂で開催しております。院外からの参加者にも開放しておりますので、興味のある開業医の先生がいらっしゃいましたら、ぜひご参加ください。
最後に、将来、利根沼田地域の在宅や施設に入所されている患者さんに対しても、開業医の先生方々や他の病院と連携することにより適切な栄養療法を提供していくことをわれわれNSTは理想としています。

メンバー構成

医師・歯科医師・歯科衛生士・薬剤師・看護師・管理栄養士・調理師・臨床検査技師・言語聴覚士・MSW・事務で構成しています。

PAGE TOP