2025年06月01日
利根歯科診療所
歯科衛生士
小林 菜美
コロナ禍のマスク生活の影響で口呼吸の人が増えているように思います。口呼吸は、様々な体調不良の原因になると言われており、虫歯・歯周病も例外ではありません。
今回は、お口の健康と鼻呼吸の関係についてお話します。
無意識のうちに口呼吸に
「鼻呼吸をしていますか?」と質問すると「もちろん鼻呼吸です」と多くの方が答えますが、自分では気付かずに口呼吸をしていることが多いようです。
よく聞く症状は、「朝起きたときに口が乾いている、ネバつく、喉が痛い」です。他にも、空気が触れる上の前歯の先端部分にだけ着色が見られたり、歯石の付き方や歯ぐきの腫れなどでも口呼吸が発見できます。
まずは自分が何呼吸かを見直してみてください。
口呼吸の口の中、どうなっているの?
健康な口に不可欠なのは唾液です。唾液にはお口の中のpH調整や汚れを洗い流してくれる働き、消化や免疫の作用があります。しかし、口呼吸をしていると唾液が乾燥しその能力を発揮できません。お口の中のpHが下がり虫歯ができやすくなります。歯の表面が乾燥し汚れが残り歯石がつき歯周病になりやすくなります。唇が荒れたり、口内炎ができやすくもなります。
歯磨きを頑張っているのに成果が出ない、虫歯・歯周病が進行する。そんな時は、口呼吸を疑いましょう。お口の健康には、歯磨きに加え「口呼吸対策=鼻呼吸すること」が必要なのです。
鼻呼吸はいいことずくめ
鼻呼吸では、鼻の粘膜や線毛がフィルターとなり、細菌やウイルス、ほこりや花粉などの侵入を防ぎます。それから、吸った空気を加温・加湿し肺や気管支を守ってくれます。
一方、口呼吸だと細菌などの異物が直接取り込まれ、口や喉が乾燥し唾液の少ない口の中で繁殖します。そして、虫歯や歯周病だけでなく風邪やインフルエンザなど感染症にもかかりやすくなるそうです。
また、鼻の奥は、呼吸や体温などの生命活動や自律神経やホルモンの調節を行っている脳に近く、鼻で吸った空気が熱のこもりやすい脳を冷やし脳の働きを助けます。さらに、口呼吸は鼻呼吸と比べて吸い込む空気が10%以上も少なくなり、身体に入る酸素が減るため、脳が低酸素状態になり、血圧の上昇、夜間のトイレ回数の増加や睡眠の質の低下などの原因にもなるそうです。
口呼吸は万病のもと。お口のためだけでなく、いいことずくめの鼻呼吸を習慣にしたいものです(図1)。
鼻呼吸には、舌の位置が大切です。正しい位置は、口を閉じた時に舌が上顎につき、舌の先端が上の前歯の根本の少し内側についている状態です(図2)。
コロナ禍のマスク生活では、マスクの下で息苦しさから口呼吸となり、マスクをはずしても口をポカンと開けている人が増えました。舌の筋肉が弱くなってしまったのです。舌の筋肉が弱くなると舌が下がり口が開き口呼吸になります。鼻呼吸には、「口を閉じること」「舌を鍛え上顎につくようにすること」が大切です。対策を3つ紹介します。
1つ目は、寝る時の口閉じテープ「マウステープ」の使用です(図3)。睡眠時は口が開き口呼吸になりやすいので唇にテープを貼り口を閉じましょう。これにより、下顎が上がり舌も上がるので気道が拡がり、いびき対策にもなります。
2つ目は、舌のトレーニング「あいうべ体操」です。一日30回程度、毎日続けましょう。足裏をしっかり床に着け背筋を伸ばして行うと口周りが十分に動きさらに効果的です。
3つ目は、食事です。「十分に噛む・舌を使って飲み込む」そして味わって食べることで体操と同じように舌や口周りの筋肉を鍛えることができます。
紹介した症状に当てはまる所はありましたか?歯科外来では、口呼吸が疑われる方が意外に多く、呼吸の改善により口腔内が良くなってきたケースも経験しています。
マウステープについては、「無意識にはいでしまった」「無理だった」という患者様の声もありますが、「朝の不快感が減った」「口内炎ができなくなった」など喜びの声も聞けています。適切な呼吸と食事、そして毎日のお手入れでお口の健康を守りましょう。
なお、鼻呼吸の難しい方も諦めずに専門医と相談しながらチャレンジしてみてください。利根歯科診療所もお手伝いします。
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