歯の治療だけでなく口の機能を守る時代へ

2026年06月01日

利根歯科診療所
歯科医師
大塚寛晃

皆さんは8020運動をご存知ですか?これは歯が20本以上あれば食生活に困らないため、生涯自分の歯で食べる楽しみが味わえるように80歳で20本以上の歯を保ちましょうという運動です。8020運動達成者は平成元年で7%でしたが令和現在は40%まで増加しました。それでは、今の方が健康な方が増えているのでしょうか?実は歯があっても十分に食べたり話したりできなくなることがあります。歯があるだけでなく口の機能を果たすことがいかに大切かを、歯科が行っているお口の機能低下予防の取り組みを紹介しながらお伝えしたいと思います。

体が弱っている状態(フレイル)に気をつけよう!

フレイルとは分かりやすく言えば「加齢により心身が老い衰えた状態」のことです。早く対策をとることで元の状態に戻る可能性があります。そして中でも注目されているのがオーラルフレイル(お口の機能低下:図1)です。硬いものが噛みにくい、食べこぼしが増えたり飲み込みにくい、むせる、話しにくい、口の中が乾きやすい、口の中が汚れている、こんなちょっとした口の周りの衰えが積み重なるとオーラルフレイルになるのです。

オーラルフレイルがあると将来フレイル・要介護認定になるリスクが2.4倍、死亡リスクが2.1倍になるとも言われています。自分はまだ食べられているから大丈夫と思っていても衰えは急にやってきます。早く気づいて対策を取ることが大切です。

まずはチェックリスト(図2)でご自身のお口の健康状態を確認してみましょう。5項目のうち、2項目以上に「該当」があるとオーラルフレイルです。

図1 オーラルフレイル概念図
出典:一般社団法人 日本老年歯科医学会ホームページ「オーラルフレイルを知っていますか?」より
https://www.gerodontology.jp/committee/002370.shtml
図1 オーラルフレイル概念図
出典:一般社団法人 日本老年歯科医学会ホームページ「オーラルフレイルを知っていますか?」より
https://www.gerodontology.jp/committee/002370.shtml
図2 オーラルフレイルのチェック項目
出典:一般社団法人 日本老年歯科医学会
口腔機能情報サイト「オーラルフレイルとは?」より
https://www.gcdental.co.jp/product/oralfunction/patient/
図2 オーラルフレイルのチェック項目
出典:一般社団法人 日本老年歯科医学会
口腔機能情報サイト「オーラルフレイルとは?」より
https://www.gcdental.co.jp/product/oralfunction/patient/

歯医者でのオーラルフレイル検査で自分の状態をより詳しく知ろう!

歯科医院では①咬む力②舌の力③舌や唇が動くかどうか④咀嚼機能⑤飲み込む機能⑥唾がよく出るか⑦口の中の汚れ具合の7つの検査で評価します。3つ以上が基準を下回ると口腔機能低下症と診断されます。口の中の汚れも機能低下に関係があるの?と思うかも知れませんが、汚れは虫歯や歯周病のリスクになるため大切な歯を失うことにつながるだけでなく、舌に付いた汚れで温度や味が分かりにくくなり食べ物の味が濃くなったり、菌が気管や肺に入ると誤嚥性肺炎の原因になるため体の健康にも影響を及ぼします。

検査は専用の機器等(図3)を使って判定します。診断結果によって衰えてしまった機能を判定し、何が原因で機能低下が起こってしまったかを考察します。そしてそれらを改善する体操や訓練、生活習慣や食生活を改善するための指導が受けられます。

図3 検査に使用する機器
図3 検査に使用する機器

お口のことだけ考えれば良いわけではない!

体が弱っていく状態を予防するには、確かにオーラルフレイル予防が重要です。しかしお口のことだけ考えればいいという訳ではありません。実は社会とのつながりを失うことが体が弱っていく最初の入り口だと言われており、「フレイル・ドミノ」(図4)という表現で表されます。

お口の機能を失うと友達と話しづらくなったり、食べられる物が限られると一緒に食事に行きづらくなってしまいます。また歯が無いなどの見た目が気になり人前に出にくくなることもあります。これが結果として外出や人付き合いが減り、社会との繋がりを失うことになるのです。地域活動や行事に参加したり、友達とおしゃべりをしたりするだけでも心と体を守る大事な予防になります。人とのつながりを大切にしてドミノ倒しにならないように気をつけましょう。

そのためにもかかりつけの歯医者を持ち、しっかり噛める歯や入れ歯の状態を整えることが大切です。そしてそれを使える機能がどうなっているか検査で確認して、健康的な生活が送れるようにしてはいかがでしょうか?現在利根歯科診療所では虫歯や歯周病の治療だけでなくお口の機能を高めることで健康を延ばす取り組みを行っていますので、気軽に検査や診察に来てください。

図4 フレイル・ドミノ
出典:東京大学 高齢社会総合研究機構 飯島勝矢先生
tayoriniホームページ「フレイル・ドミノを防ぐには?運動よりも大切な社会とのつながり」より
https://kaigo.homes.co.jp/tayorini/gerontology/005/
図4 フレイル・ドミノ
出典:東京大学 高齢社会総合研究機構 飯島勝矢先生
tayoriniホームページ「フレイル・ドミノを防ぐには?運動よりも大切な社会とのつながり」より
https://kaigo.homes.co.jp/tayorini/gerontology/005/

PAGE TOP