2026年03月01日
介護老人保健施設とね
認知症看護認定看護師
吉野 千恵
日本は世界でもトップレベルの長寿国であり、高齢者の増加にともなって認知症になる人の割合も年々増え続けています。
認知症になっても住み慣れた場所での生活が継続できるように「誰が認知症になってもお互いさまだよね」「もし私がなっても今まで通りよろしくね」と言い合えるような地域の人との関係性づくりや支え合いがこれからの時代はとても大切になってくると思われます。
高齢者の5人に1人が認知症
厚生労働省の調査によると、65歳以上の高齢者で認知症の人の割合は2022年時点では8人に1人でしたが、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると言われてきました。また、認知症は75歳くらいから急激に増加し、高齢になるほどリスクが高まる傾向にあります(図1)。そのため、これからは認知症について、1人ひとりがひとごとではなく自分や家族のこととして考えていく必要があります。
認知症は生活障害
脳は、人間の活動をコントロールしている司令塔です。様々な原因で脳の司令塔の働きが低下すると、記憶(覚える・思い出す)、感覚(見る・聞くなど)、思考(理解・判断)、感情(喜び・悲しみなど)といった多くの認知機能に障害が起こってきます。認知機能の低下によって日常生活や社会生活に支障をきたすようになってきた状態が認知症であり、初期は管理(お金・薬・スケジュールなど)、進行すると動作(食事・排泄・入浴など)に影響を及ぼしてきます。
認知症のサインを見逃さない
何かがおかしい、認知症かもしれないという変化に一番はじめに気付くのは家族です。認知症には様々な症状がみられますが、よく物をなくしたり物を散らかす、怒りっぽくなった、処方された薬が沢山余っている、身だしなみに無頓着になった、お風呂に入りたがらないなども認知症の症状である可能性があります。今までと様子が変わってきたと感じる時には注意が必要です。
認知症の主な種類
認知症には大きくわけて4つのタイプがあります。代表的なものはアルツハイマー型認知症であり、全体の約7割がこのタイプの認知症です(図2)。アルツハイマー型認知症の特徴的な症状は物忘れで、同じことを何度も聞く、捜し物が増える等の症状は初期の段階からみられます。時にはしまい忘れをきっかけに「物を盗られた」などの妄想が出現し、介護者を困らせてしまうこともあります。他にも慣れた道でも迷子になる、時間や場所、人の顔が分からなくなる、計画を立てたり、段取りよく物事を進めることができなくなる、言葉がうまく出てこないなどの症状もみられます。
認知症を予防し進行を防ぐには
- 最も効果的なのは身体活動
- 脳や身体を使わないでいると、認知症の発症や進行を加速させると言われています。自分が楽しいと思う運動や趣味活動を意欲的に行うことで脳の活性化を図っていきましょう。強制されるのではなく、楽しみながら行うことがポイントです。
- 周囲の人とのコミュニケーション
- 社会との関わりが少なくなり、人と会って話したりする機会がなくなることも認知機能を低下させる原因になります。周囲の人と楽しく交流を持つなどして、できるだけ孤立しないようにしましょう。
- 生活習慣病を防ぐ・治す
- 脳卒中が原因でおこる認知症(脳血管性認知症)もあります。高血圧、糖尿病、脂質異常症などの病気を防ぐことで脳卒中を予防することも大切です。食事や運動などによる生活習慣病対策は認知症予防にもつながります。
- 目、耳、歯
- 目がちゃんと見えて字が読める、耳が聞こえて会話ができる、歯がそろっていて(または義歯が入っていて)ちゃんと噛める、これらのことも認知機能の維持にとても重要です。
家族だけで抱え込まない
認知症は、今では「介護が必要となった原因疾患」の第1位となりました。認知症の人の家族は、本人にしっかりして欲しい、認めたくないという否定的な気持ちがあったり、家族だからこそ言葉や態度がきつくなってしまうこともあります。介護に辛さを感じた時には、周囲の支援を頼ることも大切です。体は元気に動かすことができても、認知機能の低下が認められると介護保険を利用してサービスを受けることができます。認知症に関することで不安や心配なことなどがあればまずはかかりつけの医師へ、すでに介護サービスを利用されている方はケアマネジャー(介護支援専門員)へご相談ください。