骨粗鬆症と骨折

2025年03月01日

利根中央病院
整形外科科長・部長
須藤執道

骨粗鬆症

骨粗鬆症は骨の新陳代謝のバランスが崩れることで発症します。古い骨を破壊する細胞(破骨細胞)が新しい骨を形成する細胞(骨芽細胞)よりも活発になり骨密度を低下させます。国内の患者数は約1590万人と推定され、男女とも加齢によりリスクが高まります。特に女性は閉経に伴い、女性ホルモンが減少することで発症しやすいとされています。

特に骨折しやすい部位としては、背骨の圧迫骨折(脊椎圧迫骨折)、手首の骨折(橈骨遠位端骨折)、太もものつけ根の骨折(大腿骨近位部骨折)があります(図1)。

図1 骨粗鬆症で骨折しやすいところ
出典:日本整形外科学会 患者向けパンフレット「整形外科シリーズ 1」より
図1 骨粗鬆症で骨折しやすいところ
出典:日本整形外科学会 患者向けパンフレット「整形外科シリーズ 1」より

検査にはX線(レントゲン)などによる専用機器を用いて腰椎や大腿骨などの骨密度を調べます。前述の骨折3か所を始めとした骨折を経験していなければ、骨密度が20~44歳の平均値の70%未満だった場合、骨粗鬆症と診断されます。60%を下回ると骨折の危険性がさらに増すため「重症」となります(図③)。

国内では年間約20万人が大腿骨を骨折し、その1年後に10%が亡くなるとされています。
骨粗鬆症による骨折は「軽微な外力」が原因で発症する骨折です。特に背骨の圧迫骨折(脊椎圧迫骨折)や太もものつけ根の骨折(大腿骨近位部骨折)は、立つ動作や体を支える部位の骨折であるため、高齢者の日常生活動作を障害して生活の質を低下させます。「軽微な外力」で骨折をきたす患者さんには全身的な骨の脆弱性が基盤にあるため、骨折リスクが非常に高く、最初の骨折が次の骨折を呼ぶ、いわゆる「骨折の連鎖」をもたらします。
骨折を繰り返すと生活の活動性が大幅に低下し、体の衰えが加速して寿命が短くなってしまうのです。

治療は薬物療法(注射薬や内服薬)、カルシウム・タンパク質・ビタミンDを積極的に摂取する食事療法、運動療法が3つの柱です。薬には多くの種類がありますが、年齢や進行度に応じて検討します。「重症」と診断された場合には、注射薬を勧めることが多いです。

参考資料:読売新聞 医療ルネサンス No.8424

骨折

次に骨粗鬆症に関連する骨折について説明していきます。

1. 背骨の圧迫骨折(脊椎圧迫骨折)

尻もちや転倒などの軽い「けが」で発症することが多い骨折です。特に閉経後の高齢女性は普段の生活(鍋を持ち上げるなど)で「いつの間にか」骨折する場合もあります。
X線検査で診断を行いますが、より精密な診断が必要な場合にはCT検査やMRI検査を追加で行います。MRIは骨折の新しさを診断したり、X線検査では不明瞭な骨折を見つけたりすることができます。
治療は保存加療(コルセット着用やリハビリテーションなど)が基本ですが、経過によっては手術が必要となる場合もあります(図2)。

治療は保存加療(コルセット着用やリハビリテーションなど)が基本ですが、経過によっては手術が必要となる場合もあります。

図2 背骨の圧迫骨折(脊椎圧迫骨折)
出典:日本整形外科学会 患者向けパンフレット「整形外科シリーズ 31」より
図2 背骨の圧迫骨折(脊椎圧迫骨折)
出典:日本整形外科学会 患者向けパンフレット「整形外科シリーズ 31」より

2. 手首の骨折(橈骨遠位端骨折)

中年以後の閉経後の女性が転倒し、手を突いて受傷する場合が最も多い骨折です。骨粗鬆症の初発症状といわれることもあります。受傷直後から手首の痛みと腫脹が出現し、骨折部のずれが強い場合には変形が見られます(図3)。

X線検査で診断を行い、治療はギプス固定や手術(金属プレート)を実施します。

図3 手首の骨折(橈骨遠位端骨折)・フォーク状変形
よく見られる変形は横から見た場合に、フォークを伏せておいたような形になるのでフォーク状変形と呼ばれる。
出典:日本手外科学会 患者向けパンフレット「手外科シリーズ 13」より
図3 手首の骨折(橈骨遠位端骨折)・フォーク状変形
よく見られる変形は横から見た場合に、フォークを伏せておいたような形になるのでフォーク状変形と呼ばれる。
出典:日本手外科学会 患者向けパンフレット「手外科シリーズ 13」より

3. 太もものつけ根の骨折(大腿骨近位部骨折)

転倒や転落後に太もものつけ根の部分に痛みが出現して立つことや歩くことができなくなり、下肢を動かすと痛がります。骨折部のずれが小さい亀裂骨折(いわゆるヒビ)の場合、つかまり立ちや伝い歩き程度なら可能なことがあり注意が必要です。この骨折は骨粗鬆症を伴う高齢者に多いため、認知症などがある場合は発見が遅れることがあります。

X線検査で診断を行い、治療は手術が基本となります(図4)。

図4 太もものつけ根の骨折(大腿骨近位部骨折)
出典:日本整形外科学会 患者向けパンフレット 「整形外科シリーズ 28」より
図4 太もものつけ根の骨折(大腿骨近位部骨折)
出典:日本整形外科学会 患者向けパンフレット 「整形外科シリーズ 28」より

最後に

骨粗鬆症は単に骨が脆くなるだけではなく、骨折を繰り返すことで生命にも関わる重篤な疾患です。
早期発見・早期治療が重要ですので、骨密度検査を積極的に受けましょう。

PAGE TOP