春だけではない花粉症 アレルギー性鼻炎

2021年09月01日

利根中央病院
耳鼻咽喉科医師
松山敏之

はじめに

花粉の飛散予想が放送される花粉症シーズンも終わり、花粉症の症状が落ち着いている方が多いと思います。一方で、「私はこれから迎える秋に花粉症なんだ」「私の家族は1年中花粉症だぞ」という方もいらっしゃると思います。春以外にも症状に悩まされる花粉症、一体どのような病気なのか。少し説明させていただきます。

アレルギー性鼻炎(花粉症)とは

花粉症は、医学的な正式名称を「アレルギー性鼻炎」といいます。それでは、アレルギーとは何か。簡単にいうと「自分の体の防御(免疫)システムが誤作動を起こしている状態」を指します。ですから、アレルギー性鼻炎はその誤作動による症状が鼻に現れていることになります。(写真1)

写真1(1)

正常な鼻の中。鼻粘膜の腫れはなく、鼻が通っている。

写真1(2)

アレルギー性鼻炎の鼻の中。鼻粘膜が腫れていて、鼻が詰まっている。

風邪を引くと、免疫細胞は体に害のあるウイルスや細菌などから私たちの体を守ります。風邪を引いた時に鼻水や熱が出るのは、免疫細胞からの正常な〝信号〟ですが、花粉症の人の場合、体に害のない花粉に対して免疫細胞が反応し、誤って風邪を引いた時の〝信号〟を出してしまいます。

アレルギー性鼻炎の原因は上記のように外敵や異物のため、どんなものでも原因になり得ます。スギ、ヒノキ、ブタクサ、ハウスダスト、ダニ、ヨモギ、ガ、カビ、イネ、イヌネコのフケ、他多数。
現在の日本のアレルギー性鼻炎の中で原因として最も多いのはスギ花粉です。スギ花粉が飛散するのは春のため、テレビなどでは春に飛散状況が伝えられます。自分のアレルギー性鼻炎の原因が何であるかは病院で血液検査をすれば調べられますので、症状がひどい方は調べることをおすすめします。

最新のアレルギー性鼻炎の疫学調査(2019年)では、群馬県では50.0%と2人に1人がアレルギー性鼻炎です。そのうち最も多いスギ花粉症は39.1%と高水準になっています。 (表1)

表1 『鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版』一部改変
表1 『鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版』一部改変

鼻水、鼻づまり、目のかゆみなど花粉症の症状は、日々の生活の疲労、イライラ、日中の眠気、集中力の低下、不注意のほか、お子さんですと学習能力の低下につながります。

治療について

アレルギー物質からの回避

花粉症の方であれば、飛散時期にマスクをすることに加え、洗濯物を外に干さない、花粉の付きやすいフリース素材は着ない等のことが重要になります。ダニやほこりが原因の方の場合、一年中原因物質があるため、部屋や布団を清潔に保ち原因物質の発生を防ぐことが非常に重要になります。

内服薬、点鼻薬、貼り薬

現在はさまざまな薬がありますので自分に合った薬を見つけることが重要です。

舌下アレルゲン免疫療法

アレルギーの原因物質をあえて体に取り込むことで、アレルギーを根本的に治す治療法です。舌の下に原因物質を毎日少しずつ入れて免疫システムを改善させます。舌下アレルゲン免疫療法により、花粉飛散の時期に薬を内服しなくてよくなった方もおられ、満足度の高い治療法となっています。副作用も少なく自宅で簡単に行えます。時間はかかりますが、根本的に治すことができるので、特にお子さんや若い世代におすすめしています。

手術療法

鼻の通りを良くするレーザー手術のほか、鼻水の原因となっている神経を選択的に切断することで症状を改善する手術があります。日帰りで行えるものもあり、痛みも少なく行えます。

抗体治療

免疫細胞の誤作動によりアレルギーを引き起こす経路があり、そこを遮断する抗体療法があります。こちらは最重症のスギ花粉症の方のみ保険適用になりました。

おわりに

花粉症についてもっと詳しく聞きたいという方や鼻炎の原因となっているもの(アレルゲン)の検査をしたいという方、実際にアレルゲン免疫療法や手術治療を受けたいという方、また、質問や相談等がある方は当院耳鼻咽喉科をご受診ください。

PAGE TOP